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「手杵まつり」は、漂着した唐船の金銀財宝を奪おうと王女や女官を襲撃した先人達の非業を詫び、平安初期以来途絶えることなく続けられている奇祭です。矢代崎には、宮禰宜以外は足を踏み入れる事が出来ない「聖地」として祠が建ち、悲運の最期を遂げた異国の女性たちの霊を祀っています。
観音堂前や神社脇には胴回り3メートルを越えるタモの大木が生い茂り、神社の参道には道標の石柱と大きな石灯籠が、苔むした幹を持つ満開の八重桜と妙に調和しています。
村の真中を石積みの護岸を施した谷川が流れ、階段を下りた洗い場が数ヶ所に設けてあります。川沿いの窪地に井戸を見つけました。今では使わなくなって金魚が泳いでいましたが、コンコンと湧き出る井戸で生活用水のほとんどを賄っていました。つい近年まで半鐘板が吊ってあって、寄り合いの知らせをケヤキの木槌で叩いたそうです。
田舎の原風景が随所に色濃く残り、伝統行事もすたれることなく引き継がれており、住む人の「心」と「顔」が見えてきます。タイムスリップしたような田舎の原風景。心安らぐ空間です。
( 2002年4月15日 )
※受け継ぐ農山漁村の価値ある伝統文化を顕彰する「第二回むらの伝統文化顕彰」に、「手杵祭りと田舎の原風景」をアレンジして応募したところ、一席の農林水産大臣賞に輝き、東京で表彰されました。
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